5月26日(金)シンポジウム2「下肢リンパ浮腫の病態と治療」
3. リンパ浮腫に対する先進的医療
座長 前川 二郎 (横浜市立大学 形成外科)
座長 上村 哲司 (佐賀大学医学部 形成外科)
演者 齊藤 幸裕 (旭川医科大学 外科学講座・血管外科)

リンパ浮腫は進行性難治性疾患で根治的な治療法が存在しない.死には至らないもののADLの制限や醜形により患者のQOLは著しく低下する.肝細胞増殖因子(HGF)は多くの組織で増殖活性を有し,抗線維化作用など効果も多岐にわたる.そこで我々はHGFのリンパ管新生作用を明らかにし,遺伝子治療でリンパ浮腫に対するリンパ管新生療法の開発を目指した.細胞レベルの検討では,リンパ管内皮細胞(LEC)にHGF受容体が発現し, LECにhuman recombinant HGF (hrHGF)を添加すると濃度依存性に細胞増殖能と遊走能が増加することを確認した. LECをhrHGFで刺激したところ,ERKおよびAktがリン酸化され,MEK inhibitorやPI3K inhibitorで阻害するとLECの増殖能と遊走能が有意に抑制されることから,HGFのリンパ管新生作用が証明された.続いてラットリンパ浮腫モデルで治療効果を検討した.HGF遺伝子を導入した群のみで術後14日目から有意に浮腫の改善を認めた.蛍光リンパ管造影を施行したところ,HGF群で郭清部位の微細なリンパ管ネットワークの増生と,既存の集合リンパ管のリモデリングを観察した.動物モデルにおいてHGF遺伝子治療のリンパ管新生療法の効果が確認できた.HGF遺伝子は血管新生治療薬として既に治験が行われた実績があるが,安全性を考慮し現在まず原発性リンパ浮腫患者を対象とした第1/2相治験を企業主導で2013年10月より行っている.患者登録期間は2016年3月に終了し合計19例の患者が登録された.2017年春には観察期間が終了し,統計解析を進めたのちに PMDAとの相談を経て次のステップへ進みたいと考えている.本研究成果が難治性疾患であるリンパ浮腫の根治的治療法となることを願っている.

 
※本ページの使用画像はイメージです(過去の学会風景より)
 
 

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