シンポジウム1-1「 糖尿病患者における足関節上腕血圧比(ABI)と脈波伝播速度(PWV)を用いたPADスクリーニングの意義」

5月26日(金)シンポジウム1「PADの早期発見・治療のための糖尿病診療」
1. 糖尿病患者における足関節上腕血圧比(ABI)と脈波伝播速度(PWV)を用いたPADスクリーニングの意義
座長 富田 益臣 (下北沢病院 糖尿病センター)
座長 柳瀬 敏彦 (福岡大学医学部 内分泌・糖尿病内科)
演者 前田 泰孝 (九州大学病院 内分泌代謝・糖尿病内科)

足関節上腕血圧比(ABI)と上腕-足首脈波伝播速度(PWV)は非侵襲的な動脈硬化指標である。糖尿病患者における末梢動脈疾患(PAD)の有病率が一般群と比して高頻度であることは以前より知られていたが、正確な有病率の知見は乏しかった。また、糖尿病においてPADは足病変と下肢切断の主要な原因であるが、心血管疾患の発症とも強い相関がある。北部九州と沖縄の広域にわたる多施設の協力のもとに得られた九州動脈硬化予防研究は、日本人における早期動脈硬化症の指標としてのABIとPWVの意義を明らかにすることを目的とした大規模コホート研究である。九州大学医学部第三内科とその関連17施設,琉球大学医学部第二内科とその関連6施設に通院中の外来糖尿病患者4272名を対象としてABI/PWVを測定し、糖尿病患者におけるPADの有病率およびABI/PWV異常と予後の関係を明らかにした。PADを強く疑うABI 0.9未満の症例は295例(7.6%)、0.9-1.0の境界例も349例(8.9%)と高率で、ABI測定前の既診断率・既治療率も低率に留まった。また、ABI低下群では全死亡、心血管死、PAD新規発症が有意に増加した。全死亡を目的変数とした重回帰分析では、ABI 0.9未満および0.9-1.0の境界例が年齢、性別、BMI、HbA1c、喫煙およびその他の動脈硬化性疾患のリスク因子とは独立した説明因子であった。一方で、PWVについてもPWV上昇に伴い心血管事故の発生率と全死亡率の増加を認め、心血管事故と全死亡のカットオフ値を14m/sおよび24m/sと求めた。古典的リスク因子で補正しても全死亡と心血管事故の独立した危険因子であった。糖尿病患者におけるABI低下とPWV上昇はその他の動脈硬化性疾患の危険因子とは独立した全死亡のリスクであり、やはり心血管死に寄与するところが大きいと考えられる。またABI 0.9-1.0の境界例についても、単にPADの発症だけでなく、心血管イベントおよびその関連死について同様に注意が必要と言える。ABI/PWVの測定は組み合わせによりリスクの補完が可能であり糖尿病患者の予後予測に有用と考えられる。

 
※本ページの使用画像はイメージです(過去の学会風景より)
 
 

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