教育講演8「アウトカムを見据えた下肢血行再建選択」

5月27日(土)教育講演8「アウトカムを見据えた下肢血行再建選択」
座長 太田 敬 (大雄会第一病院)
演者 東 信良 (旭川医科大学)

末梢動脈疾患(PAD)に対する下肢血行再建はまさに日進月歩で変容・進歩しているが、血行再建選択に関するエビデンス構築は着実に進んでいるとは言い難く、結果、明確な指針の変更がないまま実臨床が行われている。

診療ガイドラインの確立が難しい背景には、PAD患者やそれを取り巻く医療環境の著しい多様性も大いに影響していると考えることができる。多様性は患者背景や足病変所見、全身状態などに留まらず、治療の達成目標も一様ではないと考える。

CLIの治療アウトカムは一般に救肢(大切断回避)とされている。もう少し高いアウトカムを想定できる対象患者においては、潰瘍治癒を促すに足る血流をある程度の期間維持できればwound-freeの足を提供できる。さらに血流が長期にわたって維持されれば、患者の大切断の恐怖からの解放、ADLの改善、歩行機能の回復といったより高いアウトカムを期待できる患者集団も存在する。一方、筋拘縮が不可逆的であったり、寝たきり、あるいは意識のない症例では、治療目標のアウトカムは、上記のようなものとは異なる。

治療アウトカムを、「疼痛・感染巣除去」「救肢」「潰瘍完治」「ADL回復・歩行」「生命予後改善」と分類すると、後2者へ向かうためには、再建血行の長期持続性が必要となる。また、wound-freeを達成するにしても、大きな創傷に対してはより大量で長期の血流維持が必要となる。

理想的な治療方法選択は、まず、患者の足病変の状態・下肢機能を評価して、救肢後の機能予後を予測し、かつ、患者の全身状態・臓器機能から生命予後を予測して、どのアウトカムレベルまで求めるか治療到達目標を定め、それを達成可能な血行再建方法を選択するのが理想的と考えられる。しかしながら、まだ、そうした予後予測を行えるだけのデータ量が得られていない。

我が国は、世界最速の高齢化が進み、超高齢でADLが低下したり、認知機能が低下し入院生活に耐えられないCLIも珍しくなくなり、透析CLIといった非常に難治な症例を含めるとCLIの患者多様性では世界で類をみない幅の広い患者集団を有している。単一の治療指針では対応できないことは明らかであり、是非、治療アウトカムを見据えた血行再建方法選択を実現できるような血行再建医の考え方の成熟、高いアウトカムを実現可能なチーム医療の醸成、そして予後予測を可能にするデータベース構築が求められている。

※本ページの使用画像はイメージです(過去の学会風景より)

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